伝統文化を守る


インスタグラムに突然メッセージが届いた。送り主は相互フォローしあっている岐阜県にある「人形の石川」のご主人からだった。

そのメッセージの内容は以下のようなものだ。

この情熱に一瞬で惚れてしまった。少しばかりではあるが、応援の気持ちとして彼が主導している「起縁プロジェクト」の動画をこのブログでも紹介したいと思う。

 

起縁(ぎえん)プロジェクトとは

子どもの幸せと健やかな成長を願うために飾られる節句人形。

起縁プロジェクトはこの伝統的なお人形を節句時だけではなく、受験や発表会などの成功祈願や健康祈願など、日々の暮らしの中でも「願掛け」「縁起物」「必勝祈願」「合格祈願」として飾ってもらうことを推進する活動です。

この活動を通してお子さまが自身のお人形に対する愛情や家族に対する感謝の心を育んでもらうとともに、各ご家庭の心温まる物語や場面を創出する機会を増やしていただくことで、節句人形と文化を未来に伝えていくことを目的としています。

以上、「人形の石川」サイトより

 

今のご時世、日本の伝統文化を守るというのは本当に難しくなってきている。それは煎餅業界も一緒だ。お客様の趣味嗜好の変化、風習の簡素化・略式化、他文化との融合など要因は数多くあり、変化のスピードはすさまじい。クールジャパンで日本の文化を世界に発信しようといっても、その恩恵にあずかれるのはかぎられたごく一部の分野でしかない。ましてや私のような小さい家族経営の会社はその逆風に太刀打ちできるほどの体力がないことも多い。

そのような中で、「人形の石川」さんのように志が高い者同士が集まり協力し合って頑張ろうとしている姿を見ると、業界は違えど心から応援したくなるし、我々も負けていられないというモチベーション向上の原動力となる!

先日、ある書店に行った際にこのような伝統文化の多様化の事例を目にした。

漆器で有名な山中塗とスケートボードのコラボレーションだ。正直、あまり安易な伝統文化、伝統芸術のコラボは好きではないのだが、この発想には「なるほど!!」と感心してしまった。みな打開策を模索して頑張っているのだ。

「伝統文化を守る」ということは、決して古いやり方を踏襲していく事だけではない。本質を見極め幹がぶれないように、しかしたえず時代のニーズに合わせながら変化していくこと。そして「次世代に伝わり、つなげる」ことが伝統文化を守るということなのだと思う。

このような素晴らしい刺激を与えてくださった「人形の石川」の石川様には心から感謝します。そして、起縁プロジェクト頑張ってください!!!

 

手焼き煎餅(せんべい)神田淡平 6代目

哲学者・梅原猛さん逝く


15日付の新聞に市川海老蔵と堀越勸玄君が團十郎と新之助を襲名するという嬉しいニュースの横に、私にとって非常にショッキングなニュースが掲載された。

「梅原猛さん死去 哲学者、独自の古代史論 93歳」

市川猿之助とともに制作したスーパー歌舞伎は今もなお受け継がれている。哲学だけでなく、歴史や芸術にも精通し、幅広い分野と斬新な視点で世に問いかけた巨星が逝った。新聞にも書かれているが、文学・歴史・宗教の分野で従来の学説に挑んだ著作が「梅原古代学」として親しまれていた。

私と梅原猛さんとの出会いはこの対談集だった。

京都和菓子修業時代に古本屋で見つけ、大志を抱いた少年気分だった私に勇気を与えてくれそうなタイトルに一目惚れしたのを覚えている。そして、この対談集はそうそうたる面々が登場する。哲学者の中村元、中村雄二郎、作家の陳舜臣、五木寛之、瀬戸内寂聴、宗教学者の山折哲雄、心理学者の河合隼雄、近代文学研究者の鈴木貞美、歴史学者の西山松之助。タイトルの通り、この本は少年、厳密にいうと高校生に向けて書かれている。しかし、大人が読んでも十分に読み応えのある内容だ。

自分が夢見た世界を、詩にしたり、小説にしたり、劇や音楽や美術にするわけです。まさに芸術は、夢の産物ですよね。そうして表現された夢は、現実よりもはるかに魅力的です。すばらしい芸術というものは、みな、現実よりいっそう生き生きとしている。芸術家というのは、そういうすばらしい夢を見る能力をもっているわけです。そういう人間なんですね。

冒頭の章でこんなことが書かれていた。私はこれを読んで、自分の夢を煎餅に託そうと決めた。私にとって煎餅が芸術作品となるように。

そして、私が一番面白く、度肝を抜かれたのは、近代文学研究者の鈴木貞美氏との対談「『三島由紀夫』体験」の中の梅原の発言だった。

鈴木氏が三島由紀夫と同い年の梅原氏に対して、「三島の天皇制に対する考え方について、梅原さんはどうご覧になっていますか?」と質問した。梅原氏の回答はこうだった。

私はだめな兵隊なんです。三島はだめな兵隊であるよりさらにだめな人間だった。僕は、兵隊になるだけはなったんや。なったけど、行ってだめだった。その時の思想は、やっぱり日本は負けるだろうと思っていた。そしてどうせ負けるんだから、生きて帰ったほうがいいだろうという考え方だったんですよ。この日本のファシズムかぶれの政府は、すぐに負けるに決まっているだろうと。だから僕も死ぬにちがいないという考え方だったですね。だから三島のように、戦争で死んだ人間を美化する気にはとてもならなかった。つまり、三島は受難がゼロでしょう。自分だけ安全なところにいて、ぬくぬく育ったという人間。僕は多少は受難をしたな。弱い兵隊で、戦争がいやでしようがない人間。だから、三島のように戦争を美化するというようなことは、とてもできなかった。僕は戦争は嫌いですね。決定的に嫌い。そして、自分が、立派な兵隊になりえなかったから、その埋め合わせとして特攻隊の人たちに憧れるということなどまったくばかばかしいと思う。だから特攻隊の人たちは気の毒だったと、私はずっといまでも考えているんです。そこらへんがね、どうしても三島の思想は私にとっては理解できないですね。

三島由紀夫は単純にすごい文学者なんだと思っていた私にとってこの考え方は衝撃的だった。私に批判する批評する視点を与えてくれたのは梅原猛氏だったような気がする。

もちろんこのほかにも日本人論、文明論、縄文思想、法然と親鸞、スーパー歌舞伎、脳死、などなど好奇心をくすぐる内容ばかりだった。

この本を含め数冊しか梅原猛氏の著作は読んでいないが、今回を機に梅原猛にどっぷり漬かってみようかと考えている。

勝手にいつか会えるのではないかと思っていた方が亡くなってしまったのは非常に悲しい。彼がこの世に残してくれた「知」に是非皆さんも触れてほしい。

梅原猛氏に対し、謹んで哀悼の意を表します。

 

手焼き煎餅(せんべい)神田淡平 6代目

今戸焼白井さん


いつもお世話になっている今戸焼人形の職人、白井ご夫妻の工房にお邪魔してきた。今回は白井さんが講演会をした際に作成した資料を頂き、その中で神田淡平の今戸焼煎餅についても触れてくださっていて、そのお礼を兼ねての訪問だった。

白井ご夫妻は本当に精力的に活動されていて、12月から葛飾区郷土と天文の博物館で開催される展示会にも展示に協力していたりとその活躍ぶりは枚挙にいとまがない。さらに二人で協力して仕事をしている様子は私たち夫婦にとっても大変参考になることも多く、僭越ながらいつも先輩として見習っている。

来年の干支は亥で、すでに干支の今戸焼人形は完成していた。和気清麻呂で有名な岡山県の和氣神社を参考に、亥と縁が深い和気清麻呂が背中に乗っているデザインになっている。毎度白井さんのデザインする今戸焼人形は愛らしさと上品さがあり、見る者を和ましてくれる。

手焼き煎餅(せんべい)神田淡平 6代目

煎餅の歴史 その4 ”煎餅発祥の地”


前回のブログで日本で初めて煎餅を作った嵯峨小倉の和三郎(改め亀屋和泉藤原政重)について記述した。その和三郎の功績をたたえて、現在でも京都の嵐山にある老舗和菓子店・老松嵐山店の入り口の脇には”煎餅発祥の地”として立札が設置してある。

これがこの立札だ。経年劣化によって痛みが激しく、読みにくい状態になってしまっているのが非常に残念であるが、何とか読み解いてみたので、ここに書かれている内容を以下に記述する。

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『江戸楽 2018/9月号 No.114』 山本海苔店・神田淡平対談


月刊『江戸楽』が昨日発売になった。今月号の人気コーナー「粋な人 粋な話」において、わたくし神田淡平6代目が、日本橋に本店がある山本海苔店7代目若旦那の山本貴大さんと対談している様子が掲載されている。

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